2015年7月14日火曜日

辺獄のシュヴェスタ(竹良実)


―紹介感想以下ネタバレ注意

絵:3/5
構成:4/5
ストーリー:5/5

「地の底の天上」で話題をになった竹良実先生の(初の?)長編である。
舞台は中世ヨーロッパ、魔女狩り全盛。
魔女狩りで育ての親を殺されたエラは復讐の思いを胸に敵の懐とも言える修道院に収容される―――――――

作品通じて陰鬱である。しかし、非常に情熱的でもある。
あえて誤解を恐れず言うなれば、紛れもなく、これはスポ根ものであろう。
ただし、通常想像されるような快活さ、青空の下突き抜けるような爽快さは一切微塵も感じられない。どちらかというと、地下室でひたすら実験を続ける報われない科学者的なスポ根(伝われ)である。つまり、黒猫チェルシーのような直球ロックではなくkilling the dreamみたいなハードコアである。
ここらへんの趣向は前作「地の底の天上」と基本的には一緒で、作者の「歯を食いしばって頑張っている人を描きたい」(巻末参照)が滲み出た結果といえよう。



――――「償わせるつもりはない。そんなことをしても母さんは帰ってこない。母さんが受けた悲しみが和らぐわけでもない…。だから、私はただ殺す。」――――――
                                               エラ

とても主人公のセリフとは思えない(笑)
よくよく復讐はテーマに挙げられるが、かように贅肉を削ぎ修飾を捨てた復讐は稀だろう。
人間、目的に理由をつけたがるものである。就職活動然り、志望動機然り。しかし、復讐なんざ大抵、元は「やつが気に食わねえ」ってもんである。それを素直に受け入れ原動力にするあたりがエラの強さかなと。

アーモンドの花の下りのゾクッとした話構成、話にマッチしたいちいち鬼気迫る絵。今後も大いに期待したい。